ベテランのアドバイスは素直に容れて

私は動物による農業被害防止(獣害防除)のために狩猟免許を取得しようと思い立ちました。

当初は費用が安く済む、罠+槍あるいは電気槍での猟を考えていたのですが、ベテラン猟師の方から「槍でもできなくはないがリスクが大きいので勧めはしない。特に、1人でやることが多くなるのなら銃を使った方がいい」とアドバイスをいただきました。

止刺の時に協力する旨言ってくださった銃所持の方々もいらっしゃったのですが、私はどうしても一般の方と生活リズムがズレがちであるため、ご厚意に甘えるのも躊躇われました。

そこで、ベテランの方のアドバイスは素直に容れようと猟銃取得を決意しました。

 

狩猟免許とは別

猟銃で狩猟を行うには、銃猟の免許と、銃の所持許可がそれぞれ必要です。

どちらか片方だけでは銃を使った狩猟はできません。

銃猟免許は必要になったときのために取得してありました。銃猟免許と銃所持許可の取得の順番はどちらが先でも差し支えありません。

狩猟免許試験(銃猟)に合格しました

 

以下、猟銃取得までの手続の流れの説明も兼ねて、私が猟銃を取得するまでの経過をお話ししたいと思います。ライフル銃や空気銃は手続が異なるのですが、ここでは一般に狩猟に使われる散弾銃の説明となります。

 

所持許可取得の為には筆記試験と実技試験の合格が必要

猟銃取得には、銃の知識があるか、人格的に問題がないか、最低限の技能があるか、取得する銃につき保管管理ができるだけの設備があるかといった要件をクリアする必要があります。

具体的には、筆記試験、面接、実技試験、保管施設の調査となります。

 

筆記試験(猟銃等講習会・初心者講習)

申し込み

筆記試験を受けるためには、猟銃等講習会の初心者講習を受ける必要があります。

実際は、同じ日の午前中に講習を受け、午後に試験を受けるという形になります。

その申し込みは住所地を管轄する警察署で行います。私は茨城県つくば市在住ですので、つくば警察署へ申し込みに行きました。

ここでもちょっとした面接、どうして銃を取得したいのか等が聞かれます。時間も30分ほど取られるので、あらかじめ連絡してから行きます。

 

この申し込みの段階での小面接(?)で取得を思いとどまるよう強く申し向けられたとか、圧迫面接じみた対応をされたという話を聞く事がありますが、私の場合は淡々と質問がされるという感じでした。

銃を取得する理由について、自身は農家ではなく司法書士・行政書士だが農業法人設立などの農業法務を取り扱っている。イノシシ等による農業被害で農業を廃業してしまうケースもあり、間接的にではあれ獣害の影響を受ける。

また、大仰になるのでごく簡単に話した程度ですが、食糧難の到来の可能性もあるので獣害による農業の廃業という事態を多少でも食い止めたい、といった事を話しました。

ほか、自身の精神状態や家族の理解などについて質問がされました。

 

その後は申し込みの手続を行い、講習で使うテキストを受け取りました(猟銃等取扱読本。テキスト代は申請費用に含まれます)。

 

講習・試験当日

講習は複数の個所で行われますが、私は茨城県笠間市の狩猟者研修センターで受講しました。

講習当日は、午前中に講習、午後に筆記試験(考査)となります。

筆記試験は60分で50問。うち45問以上正解で合格です。

はっきり言って難しいです。

ひっかけ問題もありますが、細かい知識が問われる故の難しさと感じました。

試験後、テキストで確認したところ少なくとも3問は間違えており、今回は無理だなと思いました。

 

採点が終わり合格者が発表されるので、一応見に行ったところ、自分の番号があったので正直驚きました。謙遜ではなく、運に助けられた紙一重の合格だったと思います。

ともあれギリギリでも合格ではあるので、筆記試験の合格証にあたる「講習修了証明書」が交付されました。

 

しつこいが予備講習は受けた方がいい

罠猟免許や銃猟免許の記事でも触れましたが、初心者講習の大体1週間前に行われる予備講習はできる限り受けておいた方がいいです。

罠猟免許や銃猟免許の試験でも頻出分野などを教えてもらえますが、銃所持許可の試験も同様です。

 

網羅的に勉強した方がいい

ただ、罠猟、銃猟は教えてもらった分野を重点的に勉強しておけば合格が十分可能ですが、銃所持許可の試験は予備講習だけでは合格は難しいと思います。

予備講習で教えてもらった分野を重点的に勉強しながら、できるだけ穴がないように網羅的に勉強しておく必要があります。

例題集がありますので、こちらを使って勉強しておくと合格可能性は上がると思います。

予備講習案内(茨城県猟友会公式サイト内。下部に例題集があります)
http://ibaryo.com/publics/index/31/

 

実技試験

教習資格認定申請

続いて実技試験受験のための手続に入ります。

具体的には、教習資格認定申請を行います。

実技試験も講習+実射の流れで進むので(射撃教習)、そもそも銃を持たせて大丈夫な人物なのかの調査が本格的に行われます。

警察の担当の方が自宅へ訪問し面接、また、後日、近所の住民や身内に聞き込みなどを行います。

面接では自身の精神状態や家族の理解等のほか、銃を取得する理由につき突っ込んで聞かれました。また、銃の保管予定場所についても聞かれました。

ここでも上述の理由を話しました。

 

警察の方も獣害への対処の実情は分かっているのか、「罠と槍でいいんじゃないの?」というようなことは言われませんでした。

講習申し込みの際の小面接も含め、警察としては銃を持とうとする理由が明確かどうかに重点を置いているのではないかと思います。

およそ1か月半ほどで教習資格認定を受けることが出来ました。

 

実技試験(射撃教習)

続いて、実技試験の申し込みを行います。

試験は予約を入れた上で射撃場で行います。私は近くの筑波射撃場で受けました。

動画

実技試験は講習→練習射撃→検定射撃の流れで進みます。

猟銃等取扱読本を見ながら銃の取り扱いに関する講習を受け、まずは練習射撃。

25発の練習射撃、その後、同じく25発の検定射撃×2。検定射撃の25発中3発命中で合格。

 

まずは練習射撃。

的は固定ではなく、飛んで来る皿(クレー)を撃つというもの。数発ごとに射撃場所(射台)を移動します。

 

いざ、開始。

 

命中 1/25

 

・・・・・( ゚Д゚)・・・・・

 

大丈夫、これは練習だ。射撃の感覚をつかむのが主目的だ。

 

教官からは「クレーは見えている場所より実際は先にある。射撃のタイミングを早めれば命中する」とアドバイスが。

そういえば講習でも聞いた話。そうか、要はクレーが既に移動してしまった場所を狙っていたという事か。

タイミングを早める。タイミングを早める。

 

心を落ち着けて、本番の検定射撃、1回目、開始。

 

命中 2/25

 

・・・・・( ゚Д゚)・・・・・

 

教官「落ち着こう」

ええ、落ち着いていますとも、ええ。前の2倍の命中数ですよ、どこに動揺する要素があるといふのです?ずいぶん見くびられたもの、失敬ですね (; `・ω・)

教官からは、やはり射撃のタイミングが若干遅いという指摘。発出してからのクレーの軌道を説明してもらいながら、当たりやすいタイミング、個所などを教えていただきました。

 

教官「しばらく休憩をしてから、次の検定に入ろう」

銃を置いて休憩。椅子に座り、命中したときはどんなタイミングで引き金を引いたかを思い返す(3発だけなので思い返すのは容易)。

 

そして、検定射撃2回目。

 

南無八幡大菩薩、願わくはあの的射させ給へ。射損ずるものならば、この銃折りて人に再び面を向かうべからず(人様の銃を勝手にへし折るな)。

 

命中 7/25

 

ε-(‐ω‐;)

 

祈りが通じたかは定かではありませんが、ともかく合格。

とはいえ、「大体このタイミングであの辺りを撃てば当たるかな」と、半ば勘で当てたようなものなので、今後、精度を上げられるよう射撃練習を頑張る必要があります。

 

実技試験合格証にあたる「教習修了証明書」を受け取り、射撃場を後にしました。

これで銃の取得が可能となりました。

 

猟銃購入に向けて

ちょうど講習で猟友会が引退する猟師から新規登録する猟師への銃の譲渡を斡旋事業を開始したので、銃を入手したい者は猟友会に問い合わせてみるといいというお話を伺いました。

そこで茨城県猟友会の筑波支部長に尋ねたところ、今のところそのような案件はないとのことでした。

となれば、銃砲店で購入することとなります。

猟友会支部の先輩猟師の方に勧められた、龍ケ崎市の大木銃砲店さんに赴きました。

店内には様々な銃が。事前に日本製の銃が希望である旨を電話で伝えてあったので、店主さんが幾つかの猟銃やカタログを用意してくださっていました。

日本製を希望したのは、大げさになりますが多少なりとも日本の産業振興に資すればということと、単純に国産が好きで安心できるからです。

ともあれ国産となると概ねミロク製となるので、この時点でかなり絞られます。ミロク製の銃のカタログを幾つか見せていただいたのですが、猪害への対処がメインだという話をすると、対イノシシ用ともいうべき銃があると、カタログを見せてくださいました。

ミロク製 MS2000-D

スラッグ弾を使用するのでイノシシのような大型の動物に向く。命中精度が高い。構造がシンプルなので手入れがしやすく、軽量なので山中での持ち運びでも疲れにくい。

なるほど、用途にピッタリで性能も良い。

 

でも、お高いんでしょう?

 

・・・・・( ゚Д゚)・・・・・

・・・・・28万3000円・・・・・

・・・・・弐拾八萬参千円・・・・・

・・・・・にじゅうはちまんさんぜんえん・・・・・

 

本当にお高いじゃないか!!

 

茫然としている私を見かねたのか、店主さんが外国製になるけどと前置きして10万円くらい安いレミントンの銃を持ってきてくださったのですが、やはり日本製は譲れないところ。

また、MS2000-Dより幾分安い別のミロク製の銃のカタログも見せてくださいました。

MS2000-Dより汎用性が高く、イノシシ以外にも鳥にも使えるほか、スポーツ射撃にも使えるとのこと。

とりあえずこれらのカタログもいただいて、検討することとしました。

 

帰宅後、槍のみで狩猟をしている動画を視聴。

銃なしでも確かにやってできないというのは確か。ただ、動画の狩猟は3人1組など複数でやっているものが殆ど。

無理をして槍のみで猟をして大けがをして手術が必要にでもなれば費用は変わらないということにもなりかねない。

思い切りよくMS2000-Dを購入することに決定。

 

 

 

 

28万3000円( ‘A` )・・・・・ ←思い切りよくない

 

 

 

 

再度現地調査

購入を決めたら、再度銃砲店へ行き正式に購入の意思を伝えます。

大木銃砲店ではお店の方が銃の型番を記入した銃所持許可申請書を作成してくれました。多分どの銃砲店も同様ではないでしょうか。

なお、申請情報として必要なので正確な本籍地が分かるものを持っていきます。正確な本籍地が分かるものであればメモやコピーでも可です。

 

申請書に添付書類を追加して警察署へ申請。

ここでも再度小面接が行われます。所持の動機や、保管の態様について聞かれます。

特に問題がなければ保管場所の現地調査の日程調整となります。

 

保管施設(ガンロッカー、装弾ロッカー)の用意

自身で銃を保管する場合は、ガンロッカーと装弾ロッカーを用意する必要があります。

私は銃砲店で購入しました。購入したのはCastello(カステロ。富祥)です。

ロッカーはロッカーごと銃を盗まれないように壁や柱に固定するか、重りを入れることが必要です。

重りを入れる場合は、いずれも20キロ以上の重さになることが必要となります。

そのためロッカー本体の基本的重量が分かる資料が必要となるのですが、あいにく富祥さんの公式サイトの商品カタログにはロッカーの重量の記載はありませんでした。

そこで電話で問い合わせたところ、重量に関する回答は、

ガンロッカー 18.7キロ

装弾ロッカー 10キロ

とのことでした。

 

写真は実際に保管する状態の物を用意する

自身で銃を保管する場合は、ガンロッカー、装弾ロッカーの写真が必要となります。現地調査の際に渡します。

このロッカーの写真ですが、保管する状態でのものが必要です。

すなわち、保管する場所に設置し、かつ、固定した、あるいは重りを入れた状態の写真が必要となります。

私は現地調査の時点では装弾ロッカーの重りはまだ購入しておらず、写真もテーブルの上に置いた状態を撮影したものでした。このため調査のやり直しとなりました。

 

改めてロッカーを設置場所に置いて重りを入れた状態で写真を撮り、日を改めて再度現地調査。

今度は無事終了。

 

自宅保管と保管委託は併用できる

なお、自宅保管と銃砲店で預かってもらう保管委託は、どちらか片方だけしかできないという事はなく、併用できます。

私も、通常は銃砲店で預かってもらい、早朝に出発するような場合は前日に銃砲店に銃を受け取りに行き、出発までの間は自宅に保管するという方法をとる予定です。

ただし、従来、保管委託をしていた方が改めて自宅でも保管しようとする場合は保管施設の調査が必要となりますので、ご注意ください。

 

許可証交付

特に問題がなければ1か月ほどで許可が出ると聞いていた通り、1か月で許可が出たという連絡がありました。

警察へ許可証を受け取りに行くと、3か月以内に銃を購入して警察へ持ってくるよう指示されました。

許可証を持って銃砲店に銃を受け取りに行き、また、射撃練習用の実包(弾丸)の購入のための申請書も作成していただきました。

今度は、その銃を持って再度警察へ行き、申請した銃に相違ないかの確認を受けました。この確認を受けて、銃は正式に所有が認められることとなります。

ついでに実包の購入のための申請もしておきました。

猟期は11月から。それまでに射撃練習をしておきます。

 

費用

ここまでの時点でかかった費用を参考までに記載します。

銃本体 28万3000円
ガンロッカー・装弾ロッカー 4万円
銃の手入れ用具一式 8000円
プロテクター(耳栓) 5500円
所持許可に関する各種申請費用 7万円(つくば市より概ね1/2の補助)
実包(スラッグ弾)50発 1万1000円

現時点で40万円近くがかかっています。

今後、スパイク付き長靴や剣鉈などの様々な用具・備品、罠を使うのであれば括り罠等が必要になってきますが、この辺の物は先輩にお話しを伺って購入していこうと思います。

最終的には50万円ほどになるかもしれません。

 

安くはない買い物でしたが、事務所の経営のみならず日本の食糧問題にも影響すること。獣害防除に努めていこうと思います( ‘A` )

 

失礼、顔文字を打ち間違えました。

 

安くはない買い物でしたが、事務所の経営のみならず日本の食糧問題にも影響すること。獣害防除に努めていこうと思います∠(`・ω・´)