9条の文言に抵触するかと軍隊が必要かの論点が混同
9条の文言に反するか
東アジア有事が現実味を帯び、様々な防衛政策が実行に移されていることに苛立ちを通り越してヤケクソになったのか、再び自衛隊は違憲だという主張がSNS上で見かけるようになった。
では、自衛隊は違憲だろうか。
憲法の文言に抵触するという意味では自衛隊は違憲というほかない。
戦車があって軍艦があって戦闘機があって、どう見たって9条にいう「陸軍」、「海軍」、「空軍」であり、「戦力」以外の何物でもない。
では、自衛隊は廃止すべきなのか。
論外だ。ウクライナのような侵略を受け、虐殺、略奪、強姦の限りを尽くされるだけだ。
だが、かつては、左派・リベラルを中心に、この自衛隊廃止論を憲法学者、更には政治家でも主張する者が多くいた。
念のため彼らのいう自衛隊違憲論は「自衛隊は憲法の文言を見る限り違憲と言わざるを得ない。だから憲法を改正しよう」ではなく、「自衛隊を廃止しろ」だ。
脳内お花畑なのではない。かつてのソ連、今なら中国による日本侵略に自衛隊が邪魔だから確信犯的に主張していたに過ぎない。
政治家ではさすがに明言する者は見当たらなくなってきたが、憲法学者では違憲論を主張する者がいまだ存在する。
私も「憲法9条の文言を素直に見れば、自衛隊は違憲と言わざるを得ない」という立場ではある。
軍隊は必要か
では、だから自衛隊を廃止すべきという意見では当然ない。
私は自衛隊が必要どころか、きちんと軍隊として軍事裁判所ともども憲法に規定すべきという立場だ。
自衛隊の憲法論議は、自衛隊が9条の文言と整合するかという点と、自衛隊こと軍隊が必要かどうかという点がごっちゃになっているので非常に混乱しやすい。
軍隊のない国家は国家といえない。
左派・リベラル大好きおフランスでも、国家の要件を、国旗、憲法、軍隊の3つとしている。
だが、平和憲法()は軍隊を否定している。
国家に不可欠なはずの軍隊を国家の基本法たる憲法が否定しているという矛盾した状態。
私は、いわゆる押し付け憲法論のほか、この9条を以て憲法を無効と考えている。これは別途記事にしたい。
ともあれ、いわゆる現行憲法を前提とするとして、憲法改正まで軍隊を廃止しておくというわけにもいかない。
そこで、「自衛隊は呼び方が違うから軍隊ではない」というウルトアクロバティック解釈でやり過ごすことにした。
いわば緊急措置だったのだが、これが都合のいい連中が故意にこの解釈を墨守した。
実際は解釈の域など越えている。嘘、虚構だ。よくも、こんな虚構を70年間も続けてきたものだ。
東アジア有事のことを考えるなら、もうこんな虚構に付き合ってはいられない。憲法改正の国民投票を行うべきだろう。
判断事項は「自衛隊は9条の文言に抵触し違憲と言わざるを得ない。呼び方が違うからという誤魔化しを70年間やってきたが、もうこれ以上は続けられない。憲法を改正しないのなら自衛隊を廃止する。改正に賛成か反対か」