結論:あるはずがない

そんなことあるわけないだろう。ロシアのウクライナ侵略や中国の動向という現実もある。左派の主張はもう取り合わなくてもいいのではないかという方が多いのではないかと思う。

ただ、この主張、左派に対しては、それはそれで批判的な層-広い括りになるが-保守の中からも見かけるようになっているのが少々気になっているので、念のため取り上げてみたいと思う。読んでいただける方も念のための確認程度に流し読みしていただければ幸いだ。

 

憲法は外国に対して効力を有しない

この9条でアメリカの派兵要請が断れたという主張に関し、例えば、ベトナム戦争への派兵を田中角栄総理が9条を理由に断ったという逸話がある。

これは「押し付け憲法」を逆手に取ったと称賛されることもある。

だが、アメリカが何が何でも日本政府に言う事を聞かせようとすれば再占領という手段もある。その上で、日本に派兵、軍事的負担を「押し付け」ればいい。戦国時代、今川の属国時代の徳川家が出兵を押し付けられたように。

仮にそうなった時、あくまで派兵要請を断りたいのであれば、この再占領軍と戦わなければならない。9条が再占領軍を眩い光で殲滅してくれることもない。9条がどうたらなんて茶番はやっていられなくなる。

 

言うまでもなく、憲法は外国に対して効力はない。

 

この、理由になっていない理由で派兵要請を取りやめたアメリカの意図は分からない。

憲法を押し付けた経緯も考えたかもしれないが、政治判断はあくまで自国の国益が優先だ。

あくまで推測になるが、基地の提供だけでも多大な軍事的貢献だ。超巨大空母を派遣しているようなもの。

それだけの軍事的貢献があれば十分である一方、日本に軍事的存在感を持たせたくないというのも偽らざる本音としてあったのではないか。

派兵を望む気持ちはあるが、それで日本が軍事的存在感を持つのも怖い。基地提供でも多大な軍事的貢献だからそこまででもいいのではないかというジレンマ。

日本が9条という理由にならない理由で派兵要請を断れたのは、状況がそれを許しただけの事。

まあ、そうだよなというのが多くの方々の感想ではないかと思う。

 

9条で派兵要請が断れた=憲法で国が守れる

それをわざわざブログ記事にしてまで述べたのは、先述したように派兵要請云々の話が保守の中から見かけるようになったからだ。

戦後の言論構造は左派のしばしば矛盾さえする主張に保守が反論するという面があった。

特に安全保障分野では9条で戦争が起こらないというようなありえない主張に反論していれば済んだ。一種のボーナスステージでさえあった。

だが、ウクライナや中国の件でこの構造に揺らぎも生じ、保守と左派の均衡も崩れ始めている。それは保守論客の立ち位置の揺らぎにもなる。左派論者にせよ保守論客にせよ、今までのような言説ではやっていけなくなる可能性もある。

今は9条で派兵要請を断れたという意見を見かけるという程度のもの。

だが、9条で派兵要請を断れたというのは、憲法が外国に対して効力を有する、憲法で国が守れると言っているのと結局は同じ事。

そのうち保守論客の中から、もっとストレートに憲法改正反対というような意見が出てきて、ようやく前向きで建設的な議論ができそうになってきた流れを逆回転させるような事態が生じないか、若干の危惧を抱いている。

また70年、9条で国が守れるかなどと言う議論など、もうできない。

そこで、念のため記事にさせていただいた。

 

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