肯定的な材料

 
リバランス 「限界保守」を嗤う保守 |  戦後体制⇐前
 

こんなタイトルを付けておいて何だが、護れるか護れないかの議論はあまり前向きではないので、肯定的な材料と否定的な材料を挙げていくこととしたい。

既成政党、といっても、現時点でまともな政権担当能力を持っているのは自民党になるので、まず自民党について挙げてみることにする。

肯定的な材料としては対ロシア制裁や、ここ最近の防衛に関する政策の数々が挙げられる。

学術会議任命拒否に見られるような軍事研究支援、外国人の研究者、留学生の入国審査の厳格化など技術流出防止。

原発再稼働、また、原発への攻撃をきちんと想定して対策を講じている事(かつては原発は安全という建前の為に事故対策さえしなかった)。

継戦能力、反撃能力の確保や、認知戦(世論工作)への対処等々。

ただ、立憲辺りまでが反撃能力を容認する方向となっているのはアメリカの意向が働いていることによるかもしれない。とすればアメリカを巻き込んだ安倍政権のレガシー、遺産という可能性もある。逆に遺産を使い切った後にどうなるか。

ともあれ、これらが自民党が良い意味で変わってゆく兆であってくれることを願いたい。

 

否定的な材料

前の記事で取り上げた、ロシアや中国による侵略の口実になりかねないアイヌの先住民決議。

北方領土は戦わなければ取り戻せないのではないかと当たり前のことを言っただけの丸山穂高議員に対する糾弾決議(リンチ)。

沖縄での、中国による侵略の手引きにもなりうる基地への妨害活動の数々の放任。

移民政策。前述の国防政策により直接侵略をしのぐことが出来ても、内から蝕まれて滅んだら意味がない。

安倍総理の札幌演説妨害に見られるような、左派による言論封殺の容認。言論封殺は民主政を機能不全に陥らせる。

そして、安倍元総理の暗殺事件後の、事の本質から国民の目を逸らそうとするかのような動き。

戦後体制 「保守」と左派の権益共同体制 | 安倍元総理暗殺後の馬鹿騒ぎに見る

(一部改題)

上の記事では戦後体制は反日左派と体制保守の権益共同体制と述べたが、左派と一体化している状態では日本を護り切ることは期待できないだろう。

その象徴たる光景が下記の動画。昨年、令和3年の衆院選での光景だ。

 

 

動画は、自民党の元副総裁、山崎拓氏が立憲民主党の辻元清美氏の選挙応援を行った際のもの。

副総裁、場合によっては総理総裁になっていた人物がこれだ。

拉致被害者が返って来ないはずだ。

そのような人物が副総裁になっていた、なれてしまうだけで十分なのだが、それでも自民党が即時に山崎氏を除名にしていたのなら多少の弁護の余地はあっただろう。

だが実際の処分は選挙が終わってからの、1年間の党員資格停止。まともなライバル政党があったら落選者続出、大敗という可能性があったにもかかわらずだ。自民党は、野党とのパイプという次元を超えた立憲との関係性を必要としていると考えるのが素直ではないか。

 

自民党が日本を護り切れるかについては、私は否定的な材料の方が大きいと考えている。

実際、少なくとも今のままの自民党に日本は護り切れないのではないかという意見の方は見かける。

では、どうするか。

 

対処法

まず挙げられるのは、自民党内に愛国者という意味での保守系の議員を増やす方法だ。

私も自民党に入って保守系議員を増やすことで日本を護って欲しいというご要望を頂いたことがある。

これに対し、自民党のような長く存続してきた大組織を中から変えるというのは難しい、自民党を引っ張れるように野党を育てるのが良いという意見もある。

とはいえ候補たりうる政党のうち、日本維新の会はロシアのウクライナ侵略について、現職の国会議員や実質的代表ともいうべき人物がロシアに過度に肩入れし、ウクライナ降伏論を主張するなど真に日本を護る意思があるのか疑問なしとはいえない。

不祥事の質が立憲と似通っていて、自民と立憲の悪い所取りの印象も受ける。

また、国民民主党には期待したい気持ちはあるが、今までの腰の定まらなさは気になるところではある。

もっとも、いずれも、変わるかもしれないし、化けるかもしれない。

 

私は前に述べたように、既成政党は保守、左派含めた1つの大きな政党のようなものと考えている。

故に、自民党内に愛国者という意味での保守議員を増やそうとしても、その影響力が大きくなりすぎない一定割合の所でセーブがかかるのではないか。

野党に保守系政党を育てようとする場合も、実際に保守系議員が増えれば今度は自民党内の保守系議員を減らす、あるいは自民党内の左派議員や左派政党の議員を増やすという形でバランスを取ろうとするのではないか。

そのような推測の材料となりうるものとして、自民党支持者の言動も挙げられる。

 

令和3年自民党総裁選

昨年の自民党総裁選候補、河野太郎氏については中国や韓国に近しいスタンスや靖国神社参拝等について批判されていた。これに対して河野氏の支持者はその批判の内容には答えず、論点のすり替えや批判者へのレッテル貼りで返した。

例えば日本端子の件では批判や疑問の核心は中国に近しいスタンスの人物が本当に日本の為に総理大臣として働いてくれるのかというものだった。利権はあったらなお悪いという話に過ぎないにもかかわらず、この利権の有無の部分、反論できる部分にのみ反論するのみだった。

靖国については韓国の顕忠院への参拝ができて日本の靖国へは行かないのは一貫しないのではないかという批判だったが、これも内容には答えず、韓国嫌いをこじらせた限界保守と言うようなレッテル貼りで返した。

 

総理総裁候補、茂木敏充氏の発言

河野氏同様、将来の総理総裁候補である茂木敏充氏の、日本を多民族国家にする、外国人参政権を認めるという発言に対しても同様だった。

20年も前の事を持ち出して騒いでいる限界保守、その後に茂木氏はアンケートに反対と答えていると。

20年前であるなら、むしろそれが茂木氏の生来の考え方だと受け取るのが素直ではないのか。アンケートというが保守政党を称する政党から選挙に出るのであるからそのように答えただけのことではないのか。

多民族国家化、外国人参政権導入という茂木氏の意見に賛成だというのならそれを堂々と言えばいい。茂木氏はその後考えが変わったというのならその点を-単なるアンケート結果の引用ではなく-具体的根拠を示して説明すれば良い。にもかかわらず、それをせず批判者にレッテル貼りをする。

これでは立憲あたりと変わらない。

河野氏は総裁選で最終的に4割ほどの票を得た。茂木氏は総裁選には出ていないが将来の総理総裁候補とされる以上、相応の支持者がいるのだろう。

肝心の自民党支持者の相当割合がこれだ。自民党内に保守系議員を増やそうとしてもセーブを掛けてくるのではないか、他党で保守系議員が増えれば左派の影響力が小さくなりすぎないようリバランスを図るのではないかという考えは全くの邪推とは言えないのではないか。

もっとも私は当然自民党員ではないので自民党の内部のリアルは分からない。上の総裁選や茂木氏の発言に関する支持者の言動は、あくまでネットから見えるものに限られたものであることは十分に留意している。

その上で、私は自民党を中から変える、野党を育てるという方法では日本を護り切れないと考えている。

あくまで自分はそう考えるという事だ。

自民党を中から変えるのが一番早い、野党を育てるのが現実的だという方々の考えを否定するつもりは毛頭ない。その為に自民党や野党に入党するという方は社交辞令ではなく、どうか頑張って欲しい。それらが功を奏してくれれば、それが何よりなのだから。

ただ、政治は最悪の事態を想定しなければならないというのであれば、それらが功を奏しなかった場合も想定しなければならない。

想定するなら、そもそも既成政党に代わる選択肢を作るしかないという結論になる。

 

補足

既成政党に代わる選択肢というが、それは既成政党の存在意義を全否定するものではない。

自民党は経済、野党は-多分に自分に都合のいい労働者・弱者の味方という面が強いが-労働者、女性・子供といった弱者保護といった分野で一定の役割は果たしてきた。

既成政党に代わる選択肢。それは既成政党がやらない、構造的にできない政策を実現しうるものであることは当然必要ではある。

同時に、ともかく戦後の政治社会構造の下で既成政党が果たしてきた役割を肩代わりできるものであることも必要となる。

その、既成政党が果たしてきた役割を肩代わりしないまま、ただ戦後体制を覆滅するのであれば、国家社会の混乱、また別の形での亡国を招きかねない。

経済、福祉、医療、教育といった分野も、日本人が馬鹿を見ない、養分にされないよう引き直した上ではあるが、肩代わりし、承継する必要がある。

普通かよ、と突っ込まれるかもしれないが、確かにそうだ。だが、普通の事を普通に行うのが案外難しいのかもしれない。戦略や工夫は必要にせよ、奇をてらうまでの必要はないのではないか。

 

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